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Oさんの写真で巡る世界の旅 第15回 フランス編 その7 「わたしのルーヴル」

 パリ1区、パリの真ん中、セーヌ川の畔に立つ壮麗な美の殿堂『ルーヴル美術館』。パリに来た観光客なら必ず訪れる場所でもある。 数年前の冬、ルーヴル美術館まで歩いて10分の場所にあるホテルに滞在し、3日間有効の「パリ・ミュージアム・パス」を購入して、朝から晩までルーヴル美術館に通い詰めた。ルーヴル美術館を鑑賞する目的だけでパリに行くのも面白いと思った。

 とは言え、古代エジプトから1850年代のフランス絵画まで、9000年以上にわたる美術品を40万点以上収蔵し、6万㎡の常設展示場には常に3万5千点を超える作品が並んでいる世界最大規模の美術館。とても3日や4日で観られる訳もない。今回は、その中から、誰もがご存じの「ルーヴルの至宝」と言われている作品のいくつかを、私の視点でご紹介します。

 ただし、絵画や彫刻の専門知識があるわけでもない私の、極めて個人的かつ私的な印象と感想にすぎないことを最初にお断りしておきます。いつか、ご自分の好きな作品の前に立って、その作品だけを静かにじっくり見つめれば、その瞬間、「巨大な美術館」が、「あなただけの美術館」になると思います。

 

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➀ 開館と同時に、来館者の多くが他の絵や彫刻に脇目も振らず、一目散に向かう場所がここ。正に「ルーヴルの至宝」のひとつ『ミロのビーナス』の前だ。走るのが嫌いな私はいつも出遅れ、仕方なく裏に回ってビーナスの後ろ姿を鑑賞。正面からの鑑賞は、空いてからにしよう。

 

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➁ ルーヴルの2階にあるこの部屋に入ってびっくりした。地元の小学生達が大勢、先生に連れられてスケッチや模写の授業風景だ。それも地べたに座って。日本の美術館では考えられない、これもフランス流なのか?ただ羨ましいことに、彼らの教材は本物だった。それがこれ ↓↓ 

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③ 『ナポレオンの戴冠(一部)』ダヴィッド作。縦6.2m、横9.8mとルーヴル美術館で2番目に大きな作品。1804年12月2日のノートルダム大聖堂での戴冠式を描いた(描かせた)ものだ。ローマ教皇をも従え、絶頂期のナポレオンの得意満面な顔、豪奢な皇妃ジョセフィーヌの衣装、綿密に決定された構図。皇帝ナポレオンの栄光と伝説が目の前にある。

 

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④ 開館と同時に見学者が競って向かう、もう一つの部屋がここ。彼らが見つめるのは小さな一枚の絵。世界一有名な肖像画、名画中の名画、それが『モナ・リザ』。ここでは、絵の説明の前に必ず「スリに注意!」と、フランス人ガイドは話し始める。またしても出遅れた私は、モナ・リザとの再会は後にして、誰も見ていない後ろの大きな絵画に注目した。それがこれ ↓↓ 。

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⑤ 『カナの婚礼』ヴェロネーゼ作。縦7m、横10m、ルーヴルで最大の絵画として君臨。ナポレオンがイタリアのヴェネツィアから戦利品とし収奪。100人以上が描かれたこの絵画には、キリストの最初の奇跡「葡萄酒に変わった水」を注ぐ場面や、当時の海洋帝国ヴェネツィアの栄華が随所に感じられる。中央のイエスとマリア、左端の婚礼の主役、ワインを味見する人、楽器を弾く作者自身。

 

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⑥左) 『サモトラケのニケ』エーゲ海のサモトラケ島で1863年に発見され、ルーヴル美術館に送られた古代ギリシアの勝利の女神像。ニケとは戦いの勝利を祝福する翼を持った女神。顔のない、2200年前の戦勝の女神も、今は立派なルーヴル美術館の顔になっている。

⑦右) 今まさに船の舳先に舞い降りたかのような躍動感と翼の勢い、風に翻る着布の細かいひだ。ジェームズ・キャメロン監督も、この姿にインスピレーションを得て、映画「タイタニック」の有名な一場面を着想したと聞いた。オードリー・ヘップバーンも、映画「パリの恋人」の中で、この像の周りでニケを真似て踊る場面があった。

 

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⑧ 年間約800万人が訪れ、普段はどの部屋も見学者で溢れかえるルーヴル美術館。一瞬、周りの見学者が全て消え、私一人になったときがあった。閉館を知らせるベルが鳴ったとき、私はこの「フェルメールの間」に偶然一人でいた。正面にはルーヴル美術館に所蔵されているフェルメールの代表作2点が、並んで展示されていた。それがこれ↓↓

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⑨左) 『レースを編む女』20センチ四方前後の、フェルメールの最小作品。2009年に国立西洋美術館に初来日したときに見に行ったが、人の波に流され、遙か遠くから眺めた記憶がある。一心にレースを編む少女の手元に、思わず視線が引き寄せられた。小さな空間に繊細に緻密に描かれた赤白の細い糸。余りの小ささに、彼の作品が何度も盗難に遭った理由が分かった気がした。 

⑩右)『天文学者(一部)』一度はナチスにより接収され岩塩坑に隠されていたこの作品を、連合軍が発見して持ち主に返却。その後、ルーヴルに寄贈されたという数奇な運命をたどっている。この絵も2015年に来日しているが、学者が触れている天球儀や、左手近くにある書物の精緻な表現、窓から差し込む光の表現等々。今、目の前で鑑賞するのは私一人。至福のひとときだった。

 

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⑪左) 『ミロのビーナス』何回目かに、ようやく正面から向き合うことが出来た。偶然、ミロ島の農夫に発見されたBC2世紀末のビーナス。なめらかな肌、上体のくねったボディーライン、腰布のずり落ちる直前の緊張感、いつまで見ていても飽きることはなかった。未だ見つかっていない両腕がどんな形をしていたのか、いろいろ想像しながら長い時間向き合っていた。

⑫右) 『モナ・リザ(一部)』レオナルド・ダ・ヴィンチ作。フランソワ一世がイタリアから招聘したダ・ヴィンチが持参したこの一枚。死の間際までこの絵を手元に置き、筆を入れ続けた理由とは何だったのか?モデルの女性は誰か?これからも永遠にルーヴルの謎である。ほほ笑みを浮かべ、まっすぐこちらを見つめられて、私は一瞬我を忘れた。

 

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⑬  閉館時間の迫った頃、リシュリー翼の3階の窓から外に目をやると、手前にカルーセルの凱旋門、その後ろに、ついさっきまでいたドノン翼、遠くにはエッフェル塔がそれぞれライトアップされて輝いていた。ホテルはすぐそこだし、数多の名画・彫刻に圧倒され高ぶった気持ちを鎮めるため、セーヌ川の冷たい風に当たりながらホテルに戻ろう。

 

 

4号棟Yさんが地図を作って下さいました。